BPOの品質は「人」で決まるのか?属人化しないチームをつくる5つの仕組み

BPOの品質は「人」で決まるのか?属人化しないチームをつくる5つの仕組み

はじめに

「この担当者なら安心して任せられる」

BPOを運営していると、こうした評価をいただけることがあります。

担当者にとっても、会社にとっても、とても嬉しい言葉です。

しかし、ここで一つ考えなければならないことがあります。

もし、その担当者が休んだらどうなるでしょうか。

退職したらどうなるでしょうか。

別のプロジェクトへ異動したらどうなるでしょうか。

その瞬間に品質が大きく下がってしまうのであれば、それは「強いチーム」とは言えないかもしれません。

私たちは2018年からミャンマーで事業を続け、人材育成とBPO・KPOの運営に取り組んできました。

その中で強く感じていることがあります。

品質を生み出すのは「人」。
品質を守り続けるのは「仕組み」。

この二つが揃って初めて、安定したBPOサービスを提供できると考えています。

今回は、特定の担当者に依存せず、チームとして品質を維持するために必要な5つの仕組みについてご紹介します。

1. なぜBPOは属人化しやすいのか?

長期間同じ業務を担当していると、その人の中にさまざまな知識が蓄積されます。

例えば、

「このお客様の場合は、この処理をする」
「この数字が出たら、ここを確認する」
「このケースは以前にもあった」

といった経験です。

経験が増えること自体は、とても良いことです。

問題は、その知識が本人の頭の中にしか存在しない状態になることです。

すると、

「あの人に聞かなければ分からない」
「その人が休むと処理できない」

という状況が生まれます。

これは日本でも海外でも同じです。

そしてBPOでは、複数のスタッフで継続的に業務を運営するため、属人化を防ぐ仕組みが特に重要になります。

2. 仕組み①〜マニュアルを「作業説明書」で終わらせない

属人化を防ぐ最初の仕組みは、マニュアルです。

ただし、

「システムを開く」
「この項目を入力する」
「登録ボタンを押す」

という操作手順だけでは十分ではありません。

本当に必要なのは、「なぜ、その判断をするのか」まで残すことです。

例えば、「金額が違った場合は担当者へ確認する」だけではなく、

  • どの金額と比較するのか
  • 何パーセント以上の差異をエラーとするのか
  • よくある原因は何か
  • 自分たちで判断できる範囲はどこまでか
  • どの段階で日本側へ確認するか

まで整理します。

これによって、担当者が変わっても同じ考え方で仕事を進めやすくなります。

良いマニュアルは、操作方法を教えるだけのものではありません。

その業務の「考え方」を共有するためのものだと私たちは考えています。

3. 仕組み②〜OK・NG・例外の「判断基準」を共有する

品質のばらつきが生まれる大きな原因の一つは、判断基準の違いです。

例えば、AIアノテーションで、

「画像が不鮮明な場合はNG」

というルールがあったとします。

しかし、「不鮮明」の基準が人によって違えば、Aさんは OK、Bさんは NG、という結果になります。

そこで必要になるのが、

  • OK事例
  • NG事例
  • 境界事例
  • 過去に迷った事例
  • 例外処理

の共有です。

文章だけでは伝わりにくい場合は、実際の画像や画面キャプチャーなどを使うことも有効です。

「誰が見ても、できるだけ同じ判断になる状態」をつくる。

これが品質標準化の基本です。

4. 仕組み③〜ダブルチェックを「検査」で終わらせない

私たちは、品質が重要な業務ではダブルチェックを大切にしています。

しかし、ダブルチェックの目的は単に、「間違いを見つけること」だけではありません。

本当に重要なのは、見つけたミスを、次の改善につなげることです。

例えば、100件の中で6件のミスが発生したとします。

そこで6件を直して終わらせてしまえば、翌日も同じミスが発生する可能性があります。

そうではなく、

「なぜ、この6件が間違ったのか?」

を確認します。

同じ種類のエラーが2件あるのであれば、個人の問題ではなく、ルールや教育に原因があるかもしれません。

そこで、

  • マニュアルを修正する
  • チェック項目を追加する
  • チームへ事例共有する
  • 教育内容を変更する

という改善につなげます。

ダブルチェックは、ミスを見つける最後の砦であると同時に、業務改善のための情報収集工程でもあります。

5. 仕組み④〜ナレッジを「個人」から「チーム」へ移す

業務を続けていると、マニュアルにはない新しいケースが必ず発生します。

その都度、担当者が日本側へ確認し、

「今回はこう処理してください」

という回答を受けたとします。

ここで重要なのが、その担当者だけ答えを覚えて終わらせてしまうと、別の人が同じケースに遭遇したときに、また同じ質問が発生します。

そこで重要なのが、一つの質問を、チーム全体の知識に変えることです。

例えば、

  • 質問・回答集
  • 過去事例集
  • 例外処理一覧

などへ記録します。

さらに定期的なミーティングで共有します。

すると、質問 → 回答 → 記録 → 共有 → 標準化 という流れができます。

一人が学んだことを、全員が学ぶ。

この仕組みが、チーム全体の成長速度を大きく変えます。

6. 仕組み⑤〜「できる人」ではなく「教えられる人」を育てる

属人化を防ぐためには、人材育成の考え方も重要です。

例えば、非常に優秀で、

「自分なら何でもできる」

というスタッフがいたとします。

もちろん、会社にとって大切な人材です。

しかし、その人にしか仕事ができない状態では、組織としては大きなリスクがあります。

そこで私たちが大切にしたいのは、「自分ができる」から「人に教えられる」への成長です。

業務を理解する。
後輩へ説明する。
質問へ答える。
品質を確認する。
問題を発見する。
改善方法を考える。

こうした経験を積むことで、作業者から、トレーナー、品質管理担当、そしてチームリーダーへと成長していきます。

一人の優秀な人材をつくるだけではなく、その人が次の人材を育てられる状態をつくる。

これが、長期的に強いチームをつくるために重要だと考えています。

7. 属人化をなくすことは「人を軽視すること」ではない

ここまで読むと、

「仕組み化すれば、人は誰でもいいのでは?」

と思われるかもしれません。

私たちは、まったく逆だと考えています。

仕組みがあるからこそ、人はより高度な仕事へ進めます。

毎回同じ判断を一人のベテラン社員に確認するのではなく、ルールとして共有する。

すると、そのベテラン社員は、

  • 新しい業務を考える
  • 品質を分析する
  • 後輩を育てる
  • 改善を提案する

といった、より価値の高い仕事へ時間を使えるようになります。

つまり、仕組み化とは、人を不要にすることではなく、人を単純作業や繰り返し判断から解放することでもあります。

8. 「人が辞めないこと」を前提にしない

企業としては、できるだけ長く働いてもらいたい。

私たちも同じです。

しかし、組織運営では、

「この人はずっといるから大丈夫」

という前提で仕組みをつくるべきではありません。

人は、休むこともあります。異動することもあります。退職することもあります。新しい仕事へ挑戦することもあります。

だからこそ、誰かが抜けても業務が止まらない状態をつくっておく必要があります。

これはスタッフを信用していないという意味ではありません。

むしろ、人が安心して休み、成長し、新しい仕事へ挑戦するためにも必要な仕組みです。

9. AI時代、属人化対策はさらに重要になる

生成AIやAIエージェントの普及によって、業務の進め方はさらに変わっていきます。

例えば、AIがOCR処理を行う。AIがデータを分類する。AIが文章を要約する。AIが一次回答を作成する。

すると人の仕事は、「作業すること」から、「判断すること・確認すること・改善すること」へ移っていきます。

しかし、判断基準が一人の担当者の頭の中にしかなければ、AIへルールを与えることもできません。

AIを活用するためには、

  • 業務ルール
  • 判断基準
  • 例外処理
  • 過去事例

を整理し、データとして蓄積することが重要になります。

つまり、属人化をなくすことは、AI活用の準備でもあるのです。

10. AIも「チームの一員」になる

これからのBPOでは、

AI

定型処理、OCR、分類、要約、一次判定。

BPO・KPOチーム

AI出力の確認、例外判断、品質管理、改善。

日本側

業務設計、顧客対応、品質基準、高度な判断。

という役割分担が増えていくと考えています。

ここでも重要なのは、共通のルールとナレッジです。

人だけが分かる業務ではなく、人もAIにも理解できる形に業務を整理する。

これが、これからの業務設計では重要になっていくでしょう。

11. A CAN SOLUTIONSが目指すチーム

私たちはミャンマーで人材を育てる際、

「その仕事ができるようになること」

だけをゴールにはしていません。

仕事を理解する。
品質を守る。
後輩へ教える。
問題を共有する。
改善を考える。
そして、次の人材を育てる。

そこまでできて初めて、強いチームになると考えています。

日本側が常に細かく指示しなくても、ミャンマー側で業務が回る。

担当者が休んでもチームでカバーできる。

新しいメンバーが入っても、同じ基準で教育できる。

そしてAIも活用しながら、さらに品質と生産性を高めていく。

私たちが目指しているのは、そのようなBPO・KPOチームです。

12. まとめ

BPOの品質をつくるのは、間違いなく「人」です。

しかし、特定の人に頼らなければ維持できない品質は、安定した品質とは言えません。

だからこそ、

  • ①マニュアル
  • ②判断基準
  • ③ダブルチェックと原因分析
  • ④ナレッジ共有
  • ⑤教えられる人材の育成

という仕組みが必要になります。

そして、その仕組みの中で人が成長する。人が成長すれば、さらに仕組みが改善される。

この循環によって、チームは強くなっていきます。

私たちが10年間ミャンマーで人材と向き合ってきて感じるのは、「人を育てること」と「人に依存しないこと」は、決して矛盾しないということです。

むしろ、良い仕組みがあるからこそ、人は安心して成長できます。

そして、成長した人が次の人を育てることで、組織全体の品質が高まっていきます。

AI時代のBPO・KPOに求められるのは、優秀な一人を探すことではなく、優秀なチームが育ち続ける仕組みをつくること。

日本とミャンマー、そしてAI。

それぞれの強みを組み合わせながら、誰か一人に依存するのではなく、チームとしてお客様の業務を支え続ける。

A CAN SOLUTIONSは、そんなアウトソーシングの形を目指しています。

次回予告

「マニュアルを作ったのにBPOがうまくいかないのはなぜ?―『作業手順』より重要な業務設計とは」

詳細なマニュアルを渡したのに、期待した品質にならない。海外BPOでは、このような問題が起こることがあります。その原因は、マニュアルの不足ではなく、そもそも「判断基準」「例外処理」「エスカレーション」が設計されていないことにあります。次回は、単なる作業マニュアルから一歩進んだ、AI時代にも通用する「業務設計」について解説します。

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